先天性リポイド副腎過形成症の
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日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業
先天性リポイド副腎過形成症の診療ガイドライン作成に向けた
患者レジストリ構築とリアルワールドエビデンス創出研究

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先天性リポイド副腎過形成症
(LCAH)について
(患者さん向け)

1. この疾患について

先天性リポイド副腎過形成症は副腎や性腺(卵巣や精巣のことです)から出るホルモンが不足する体質です。これにより、副腎や性腺が腫大したり、ホルモンを作る細胞の中に脂肪がたまったりします。また、この体質では、一部の方の外性器が非典型的な形になることがあります。日本では、 この体質は先天性副腎皮質過形成症の中で2番目に多く、全体の約4%を占めています。

2. 原因

この体質は、StAR(スター)というタンパク質が体の中でうまく働かないことで起こります。StARは、ホルモンを作るために必要な材料(コレステロール)をホルモンを作る工場の1つであるミトコンドリアの中に運ぶ役割を担っています。StARが働かないと、コレステロールをうまく運べずに、副腎や性腺でホルモンが十分に作られません(図1)。その結果、ホルモンを作る細胞の中に脂肪がたまり、細胞が増えた結果、副腎や性腺が大きくなります(過形成と言います)。

この体質はStARタンパク質の設計図にあたる遺伝子(STAR遺伝子)に変化が生じることで起こります。両親から受け継いだ遺伝子の両方に変化がある場合に発症します。日本人、韓国人、中国人など東アジアに多く見られます。

図1 先天性リポイド副腎過形成症で不足するホルモン

3. 症状

この体質には、重症の「古典型」と、比較的軽症の「非古典型」の2つのタイプがあります(表1)

古典型では全ての副腎のホルモンが不足し、赤ちゃんの時期に副腎不全症状(吐きやすい、体重がなかなか増えない、皮膚が黒いなど)が現れることが多いです。性腺が精巣でも卵巣でも、外性器は女性型になります。成長とともにホルモンのバランスが乱れ、月経が不順になったり、早く閉経を迎えたりすることがあります。

非古典型では副腎のホルモンの不足が軽症で、1歳以降に副腎不全症状が現れることが多いです。精巣や卵巣のホルモンもやや不足気味になることがありますが、治療が必要になることは少ないです。

表1 先天性リポイド副腎過形成症の病型

4. 診断方法

この体質を診断するためには、血液検査や遺伝子検査が行われます。血液中の副腎や性腺のホルモンの値が低く、副腎や性腺を刺激するホルモンの値が高い場合に、この体質が疑われます。また、画像検査で副腎に脂肪がたまっている様子が確認されることがあります(図2)。遺伝子検査では STAR遺伝子を調べますが、現在の日本の医療制度では保険適用外(49,500円の自費検査)となっています。

図2 腹部CT検査所見

5. 治療

この体質の治療には、ホルモンの補充が必要です。副腎ホルモンの補充はほとんどの患者さんで必要となります。主にヒドロコルチゾンやフルドロコルチゾンという薬を使います。性ホルモンの補充は必要に応じて行われます。また、外性器の手術が必要になることがあります。

6. 管理と予後

この体質を持つ患者さんは、副腎クリーゼという急激な症状が出ることがあります。これを防ぐためには、発熱、嘔吐、下痢などが見られたとき(”身体的な”ストレス時)に、副腎ホルモンの量を増やして飲むことが重要です。

副腎クリーゼを疑った場合には、すぐに医療機関を受診してください。自宅で筋肉注射する副腎ホルモンを処方されている方は、受診前に筋肉注射してください (自己注射手技の説明動画)。副腎の病気を持っているという患者カードを持っているとスムーズに診てもらえます(図3)

この体質があっても、適切な治療と管理を行えば、多くの方が健康的な生活を送れます。

図3 副腎の病気を持つ方の患者カード

7. その他

症状や治療には個人差があります。わからないことや心配なことがあれば、担当の医師にご相談ください。

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